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企業価値、事業価値についての考え方

 M&Aで会社を譲渡する場合、自分の会社はどのくらいの価値があり、いくらで評価してもらえるのだろうか?逆にM&Aの話が持ち込まれた際に、買い手として、どのくらいの金額を提示すればよいのだろうか?最も気になるポイントだと思います。

 M&Aを行う場合、売り手はできるだけ高く売りたい(評価してほしい)、買い手はできるだけ安く買いたい(投資額を抑えたい)と考えるのが通常です。
結論から言いますと、絶対的な計算方法というもの無く、中小企業のM&A価格の決まり方は、売り手が「いくらで売りたい」という希望する条件がまずあって、候補先に打診をしていった結果、その会社を買いたいという買い手が現れ、交渉を重ねて最終的に決定した金額が、いわばその会社、事業の価値ということになります。時代背景、タイミング、交渉力、持ち込み先の的確さといった要因によって売買金額は変化します。

 企業評価の方法には幾つかの理論がありますが、絶対的な評価方法というものは存在しません。特に企業価値評価実務で支持されているDCF(ディスカウントキャッシュフロー)法などは、あくまで正確な事業計画が前提での評価となるので、中小企業の企業評価にはあまり適さないと思われます。

 中小企業のM&Aでは、企業価値を決めるのによく使われる計算式があり、ある程度の合理的な相場感、目安というものがあります。従って、この計算式と相場感を知っておき、その合理的なレンジの中で価格が決まるようになれば、割高に会社を買ってしまったり、割安に買いたたかれてしまったということも減るのではないかと思います。 

 中小企業M&A企業価値を算定する際に最もよく使われる算式が下記のものです。
判りやすくシンプルなことから、中小企業のM&Aの実務で最もよく使われており、条件が安いか高いかという判断が簡単にできるため、覚えておくと良いでしょう。

 ここでいう実質利益というのは、例えば
▼役員報酬を多額に取っている。
▼社長の私的経費を会社で多額に支払っている。
▼節税のために保険に加入し、利益の繰り延べを行っている。
などで、中小企業の場合は会社の実際の利益が見えにくくなっていることが多々あります。上記のような点を加味して、その会社の実力として、実際の利益としてはいくらなのかを表したものです。評価倍率については、つい5年ほど前までは、実質利益の3~5倍、すなわち営業権(のれん)は営業利益の3年分とか5年分といわれていました。
 リーマンショック、震災を経て、現在では営業権(のれん)は総じて付きづらくなっており、実質利益1年~3年分程度が相場になっています。よほど魅力的な優良企業(安定的に利益を生み出す力があり、事業に将来性もあるという会社)でのれんが5年分付くということもなくはないのですが、普通の中小企業ではまれなケースといえるでしょう。
 またマーケットが縮小傾向にある業種、M&Aの市場に買い手があまりいない業種等の場合には、のれんがゼロ、またはマイナス(売買額が純資産を割り込む)となってしまうということも十分にあります。
なお上記の評価倍率については、自社がM&Aのマーケットで人気がある(買いたい会社が多い)業種に属しているのか、そうでないのかによってもかなり違ってきます。

 中小企業のM&A業界に長年身を置いていて感じるのは、適正な金額、合理的な金額の範囲内でM&A取引がなされなければ、会社自体の運営に支障をきたしたり、買い手企業までが、おかしくなってしまったりすることが多いということです。

 M&Aは確かに事業基盤を強化したり、スピーディーな成長を実現したりできるのですが、失敗すれば資金を無駄にすることになり、無理のあるM&Aを行った結果、売り手、買い手双方が立ちいかなくなるということまで起こり得ます。M&Aがきっかけとなり買い手の経営者はもちろん売り手企業、買い手企業の従業員も不幸になってしまうのです。M&Aをうまく活用している企業はほぼ例外なく合理的な金額でしかM&Aを行っていません。自社の投資尺度を明確に持つことが大切で、どんなに魅力的で欲しい事業であっても、合理的に考え得る金額から逸脱してまでM&Aをする必要はないのです。

 これまでの経験側では、M&Aの際、のれん代が少ないケースほど、その後の運営がうまくいっているように思います。これは売り手の社長が自身の金銭欲、プライドよりも社員の今後や将来を考えて、無理のない金額で売買が成立し、会社を成長させるための資金や社員のモチベーションを高めるための資金が捻出(ねんしゅつ)しやすくなることに関係していると思われます。
事業承継を目的にしたM&Aは、いかに高い条件で売却するのかということよりも、いかにしてうまく会社(事業)を運営してくれる相手に託し、会社(事業)を次世代に継いでいってもらうのかという点に力点が置かれるべきだと考えます。
のれん代が非常に高く、合理的レンジを大きく超えた金額で取引が成立しているケースはかなり高い確率で、その後の運営は失敗し、残された社員が不幸になっています。

 買い手は将来得られるであろう利益を考えて投資するわけで、金額が大きければ大きいほど期待値はそれだけ大きくなりますし、残された会社、社員にはプレッシャーと負荷がかかることになります。その後がうまくいかないM&Aは非常に残念なものです。高く売れればそれで良いということは決してなく、いわゆるイグジットには成功したのかもしれませんがイグジット=M&Aの成功ということでは決してないのです。
  数年後振り返ったときに、会社が成長を遂げ、社員も活躍の場が広がり、一生懸命働けている、そういったM&Aが理想的です。事業を承継するためにM&Aを行なうわけなので、後に社員からも感謝されるような良いM&Aにしたいものです。