国が運営するM&A・事業継承の公的窓口、東京都事業引継ぎ支援センター

  

 

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M&Aお役立ちコラム

|第4回 従業員への事業引継ぎ

深刻化する中小企業の事業後継者問題。事業継承の対策についてアドバイスします。(全5回)

1.従業員承継(MBO、EBO) 
 息子等の親族に後継者候補がいないため、社内の役員・社員に後継者候補を求めるケースも増えてきています。親族が会社を継がないとなれば、どこかのタイミングで①従業員に継いでもらう(MBO、EBO)、②第三者に継いでもらう(M&A)、③清算廃業のいずれかを選択することになります。
 その中でも従業員への承継は、親族承継が難しい場合に経営者が考える次善の選択肢となっているようです。従業員は、会社の業務内容や業界事情について熟知しているため、他の従業員や取引先等の理解を得られやすいこと、また、時間をかけて業務の引継ぎ、後継者育成ができるといったメリットがあります。 
 しかし、従業員へ承継するためには、譲渡側である社長(株主)、譲受側である従業員、会社の財務内容おのおのにいくつかのハードルがあり、その要因の多くは資金面に起因するものです。当初従業員に継いでもらおうと考えていたものの、検討した結果、第三者へのM&Aに移行するといったケースも非常に多く見受けられます。

 2.従業員承継のハードルとは  
 具体的には、社長や株主など譲渡側からは、「任せられる社員がいること」、「株価にあまりこだわりが無いこと」が挙げられます。特に、株式譲渡代金はM&Aの方が高くなるため、条件面で譲渡側が納得しきれないことがあります。 
 従業員など譲受側からは、「熱意、リーダーシップ、責任感があること」、「会社の借入金への個人保証する覚悟(家族の同意)があること」、「株の買い取り資金があること」が挙げられます。さらに、会社の状況によってもハードルがあります。例えば、内部留保が多いなど株価が高すぎると買取資金が用意できなくなるほか、借入金が多いと個人保証がネックになるなど、スムーズな承継を妨げることになります。 

3.従業員承継の動向
 こういったハードルはあるものの、小規模企業の現実的な事業承継策として、従業員への承継は今後増加していくと考えられます。業種や規模の問題でM&Aが難しく、例え望んでも買い手と出会えずじまいというケースもかなり増えていくと考えられるからです。 
 清算廃業となると経営者としても残念で経済的なマイナスも大きいのですが、最も困るのは従業員です。厳しい雇用情勢の中、再就職先を探さなくてはなりません。特に中高年の再就職は非常に厳しいものになりますから、従業員としてもなんとか避けたいでしょう。 
 清算廃業するのであれば、損得勘定抜きで会社を従業員に任せてみるのもひとつの方法ではないでしょうか。社長からみると、不安で物足りないと感じてしまうかもしれませんが、地位や肩書が人を育てるということもあります。その際には個人保証の問題だけは解決しておく必要がありますから、とくに財務内容が良くない企業の場合には役員報酬を大幅に減らしてでも借入金を返済し、従業員への承継ができるような財務内容にしていくことが重要です。 
 「そこまでしなくてはならないのか」と思われるかもしれませんが、私財を投じなければ、清算もままならないケースも実際には多いので、結局は同じことなのです。今年に入り世代間格差の問題がクローズアップされてきましたが、会社経営においても次世代にツケを残すことがないようにしたいものです。

東京都事業引継ぎ支援センター サブマネージャー 竹内 寛暁

掲載:東商新聞 2012年11月10日号